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亡くなった方の年金と相続税

被相続人の受給していた年金の相続税での扱いについて事例を基に考えます。

相談事例

 父の相続税の申告書を作っています。年金の扱いがわかりません。父の年金は母が引き継いで給付を受けているものと、一時金で受け取ったものがあります。一時金で受け取ったものは、生命保険会社の名前が入っています。相続税の扱いはどうなりますか。

​ 未支給年金は一時所得なんて書いている記事がありますが、未収の年金は相続財産にならないのですか。

​​「回答」

年金は、その種類によって相続税の扱いが異なります。

 年金が「公的年金」であるとき

「公的年金」という言葉は法規上見当たりませんが、国民年金及び厚生年金等の政府管掌の年金が該当すると考えられます。以下、国民年金法、厚生年金保険法の規定により遺族に支給される年金について記載します。​

① 国民年金法上の「遺族基礎年金」

被相続人の受給していた老齢基礎年金(注)(基礎的な年金)に対応して遺族が受ける年金になります。

国民年金法第25条で公課禁止とされ、相続税・所得税共に非課税です。同法による一時金も非課税です。

(注) 老齢基礎年金は、20歳以上60歳未満の日本に住所のある全ての人に加入義務があり、雇用されている人、自営業者、学生なども同様に加入義務があります。​

② 厚生年金保険法上の「遺族厚生年金」(注)

厚生年金保険法第41条により公課禁止とされ、相続税・所得税共に非課税です。

(注) 厚生年金保険の被保険者は厚生年金保険法第 6条に定める「適用事業所」で雇用される70歳未満の人です。会社員、公務員が被保険者になります。従って、厚生年金の被保険者は老齢基礎年金と厚生年金保険の両方の被保険者になります。

「公的年金」と異なり、「公的年金等」という用語は所得税法第35条で定義付けされています。「公的年金」を含むより広い範囲の年金を意味しています。「公的年金等」は雑所得として、所得税法上の規定に従って課税額が算出されます。​

2 年金が「公的年金」以外の年金であるとき

「公的年金」以外の年金には、確定給付企業年金、確定拠出年金、その他の年金がありま す。「公的年金」以外の年金には、法令上公課禁止の規定はありませんが、確定給付企業年 金と確定拠出年金などの遺族への給付には、相続税課税上、相続人 1人当たり500万円の退職 金の非課税枠が適用される場合があります。

「公的年金」以外の年金には、確定給付企業年金、確定拠出年金、その他の年金があり
ます。「公的年金」以外の年金には、法令上公課禁止の規定はありませんが、確定給付企業年金と確定拠出年金などの遺族への給付には、相続税課税上、相続人 1人当たり500万円の退職金の非課税枠が適用される場合があります。

被相続人が就業中に亡くなったことにより、遺族に支払われる死亡退職金は、相続税法第3条第 1項第 2号により相続財産とみなして課税されることになっています。そして、同法施行令第 1条の 3は、確定給付企業年金法により遺族が給付を受ける年金又は一時金、及び確定拠出年金法により給付を受ける一時金もみなし相続財産になるとしています。また、相続税法第 3条第 1項第 2号に該当するみなし相続財産となる退職金は、相続税法第12条により、相続人数× 500万円の非課税枠の適用があります。

ただし、被相続人が年金の支給を受けている時期に亡くなって、遺族が受ける確定給付企業年金による給付は、相続税法第 3 条第 1項第 2号の死亡退職金には該当しないと解されているため、相続税法第12条に該当せず非課税枠の適用はないことになります。 

① 確定給付企業年金

加入者の勤務・給与により給付額の決まる年金で、確定給付企業年金法に従って給付が行われます。この場合の遺族給付金は年金に係る規約の定めに従い、年金又は一時金として支給されます。

​② 確定拠出年金

掛金とその運用収益により給付額が決まる年金で、確定拠出年金法に従って給付が行われます。同法上の遺族への給付として死亡一時金の定めがあります。​

③ 国民年金基金

国民年金を補う趣旨で設けられた年金で、この年金からの遺族一時金は国民年金の死亡一時金と同様に公課禁止とされています。​

④ その他の個人年金保険

保険会社が扱う保険商品の一種で、保険料に応じて年金・一時金を受け取る契約になっています。

この契約による遺族給付金は、死亡退職金に該当しない確定給付企業年金の遺族給付金と同様に課税されます。

課税額は、 
イ. 相続時点の解約返戻金
ロ. 一時金で給付を受ける場合の金額
ハ. 将来受け取る年金額を現在価値に割り戻した評価額
のうち、いずれか多い金額となります。

3 未支給年金
国民年金法第19条には、年金の受給権者が死亡した場合に、死亡した人が受給すべき年金で未支給のものは、親族の請求により同法上指定の親族に支給されるとあり、それに「未支給年金」という名称を付しています。具体的には、亡くなった直後の 1回分の年金で、遺族年金や死亡一時金とは区別されます。

国民年金の規定上、年金の被保険者の資格は死亡した翌日に無くなり、死亡後に支給される「未支給年金」は、民法の相続の規定によらずに指定の親族に支給されるため、遺産ではなく、受給した親族の一時所得になると税務上扱われています。

国民年金に限らず、法規上又は年金契約上で同様に規定されている未支給年金は、同様の扱いになると考えられます。そのような規定の無い年金では、未支給年金は被相続人の未収金として遺産に含まれると考えることができます。​

4 以上を踏まえて、あなたの場合を考えてみましょう。

① 引き継いで受給されている年金が「公的年金」であれば、相続税の扱いは非課税になります。

② 「公的年金」以外の年金の場合、年金が確定給付企業年金や確定拠出年金等の相続税法施行令第 1条の 3で定める退職年金等に含まれる給付であれば、確定給付企業年金については、その受給開始前に亡くなっていれば死亡退職金として扱われ、死亡退職金の非課税枠の適用があるとされます。そして、受給開始後に亡くなった時には、死亡退職金の非課税枠が無くなるとされています。

また、遺産としての評価額は、上記2④のその他の個人年金保険の場合と同様になります。

③ 受給された年金・一時金の根拠となった規約・契約内容をご覧になって、どの種類の年 金に当たるかを判断することがまず必要になります。

​④ 未支給年金の支給のの根拠となる年金規定、契約内容により扱いが変わってきますので、該当の年金を支給する会社等に問い合わせることをお勧めします。

                                 

2023.5.17 yxiaolin117@gmail.com  税理士 小林禧継


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